
葬祭給付金制度

日本における葬祭給付金制度は、故人の葬儀費用の一部を軽減するための公的な支援制度であり、国民健康保険や社会保険、後期高齢者医療制度、労災保険、生活保護制度など、さまざまな枠組みで提供されています。この制度は、経済的負担を軽減し、故人を尊厳ある形で送ることを目的としています。しかし、制度の種類や申請方法、支給条件は多岐にわたり、初めて利用する方にとっては複雑に感じられることも少なくありません。
1. 葬祭給付金制度とは?
葬祭給付金制度は、故人の葬儀や埋葬にかかる費用の一部を補填するための公的な給付制度です。この制度は、故人が加入していた保険の種類や生活状況に応じて、以下のような複数の枠組みで提供されます
国民健康保険による葬祭費
後期高齢者医療制度による葬祭費
社会保険(健康保険)による埋葬料・埋葬費
労災保険による葬祭料
生活保護制度による葬祭扶助
これらの制度は、喪主や葬儀を執り行った者が経済的負担を軽減できるよう設計されており、申請に基づいて給付金が支給されます。ただし、給付金額や申請期限、必要書類は制度ごとに異なり、適切な手続きを行わなければ給付を受けられないため注意が必要です。
1.1 制度の目的
葬祭給付金制度の主な目的は以下の通りです。
経済的負担の軽減:葬儀費用は数十万円から数百万円に及ぶことがあり、特に突然の出費に対応するのが難しい場合に支援を提供。
公平な葬送の確保:経済状況に関わらず、故人を尊厳ある形で送る機会を保証。
社会保障の一環:保険制度や福祉制度の一部として、国民の生活を支える。
1.2 制度の特徴
後払い方式:給付金は葬儀後に申請し、審査を経て支給されるため、事前に費用を立て替える必要がある。
金額の地域差:自治体や保険組合により支給額が異なる(例:3万円~7万円が一般的)。
申請期限の存在:多くの場合、葬儀を行った日から2年以内に申請が必要。
対象者の限定:故人が特定の保険に加入していた場合や、喪主が特定の条件を満たす場合に限られる。
2. 葬祭給付金の種類と詳細
葬祭給付金制度は、故人が加入していた保険や状況に応じて複数の種類に分かれます。以下では、それぞれの制度の概要、支給条件、金額、申請方法を詳細に解説します。
2.1 国民健康保険による葬祭費
概要
国民健康保険に加入していた被保険者が亡くなった場合、葬儀を執り行った者(通常は喪主)に対して「葬祭費」が支給されます。この制度は、自営業者やフリーランスなど、国民健康保険に加入する個人を対象としています。
支給条件
故人が国民健康保険の被保険者であった。
葬儀を実際に行った者が申請する(喪主でなくても可)。
申請期限は、葬儀を行った日から2年以内。
支給金額
自治体により異なるが、3万円~7万円が一般的。
例:大阪市では5万円、横浜市では5万円、千葉県の一部自治体では5万円など。
申請方法
1. 申請先:故人が住んでいた市区町村の国民健康保険課または保険年金業務担当窓口。
2. 必要書類
国民健康保険被保険者証(返却が必要な場合あり)
葬儀の領収書または会葬礼状(葬儀を行った証明)
申請者の印鑑
振込先口座の情報(通帳やキャッシュカードのコピー)
死亡届の受理証明書(役所の戸籍課で取得済みの場合)
3. 手続きの流れ
死亡届を役所の戸籍課に提出(通常、葬儀前に済ませる)。
必要書類を揃え、国民健康保険課に提出。
審査後、指定口座に給付金が振り込まれる(通常1~2ヶ月程度)。
注意点
支給額は葬儀費用の実費に関係なく定額であるため、実際の費用を補填しきれない場合も。
自治体によっては、申請書類のフォーマットが異なるため、事前に確認が必要。
故人が国民健康保険から他の保険(社会保険など)に切り替えた直後に亡くなった場合、加入状況を確認する。
2.2 後期高齢者医療制度による葬祭費
概要
75歳以上(または65歳以上で一定の障害がある方)が加入する後期高齢者医療制度の被保険者が亡くなった場合、葬祭費が支給されます。
支給条件
故人が後期高齢者医療制度の被保険者であった。
葬儀を行った者が申請する。
申請期限は、葬儀を行った日から2年以内。
支給金額
多くの自治体で5万円
例:千葉県後期高齢者医療広域連合では5万円)。
自治体により3万円~7万円の範囲で異なる。
申請方法
1. 申請先:故人が住んでいた市区町村の後期高齢者医療制度の担当窓口。
2. 必要書類
後期高齢者医療被保険者証
葬儀の領収書または会葬礼状
申請者の印鑑
振込先口座の情報
3. 手続きの流れ
死亡届を提出後、窓口で申請書類を提出。
審査後、給付金が振り込まれる。
注意点
国民健康保険と同様、支給額は定額であり、葬儀費用の全額をカバーするものではない。
申請期限を過ぎると時効となり給付を受けられない。
2.3 社会保険(健康保険)による埋葬料・埋葬費
概要
会社員や公務員など、社会保険(健康保険または共済組合)に加入していた被保険者が亡くなった場合、「埋葬料」または「埋葬費」が支給されます。埋葬料は定額、埋葬費は実費に基づく場合があります。
支給条件
故人が社会保険の被保険者または被扶養者であった。
埋葬料は葬儀を行った者、埋葬費は実費を負担した者が申請。
申請期限は、死亡日から2年以内。
支給金額
埋葬料:一律5万円(健康保険組合や共済組合により異なる場合あり)。
埋葬費:実費が5万円を超える場合、領収書に基づき実費分が支給(上限あり)。
例:全国健康保険協会(協会けんぽ)では埋葬料として5万円。
申請方法
1. 申請先:故人が加入していた健康保険組合または共済組合(協会けんぽの場合は支部)。
2. 必要書類
健康保険被保険者証
死亡診断書または死亡届の写し
葬儀の領収書(埋葬費の場合)
申請者の印鑑
振込先口座の情報
3. 手続きの流れ
保険組合に連絡し、必要書類を確認。
書類を提出後、審査を経て給付金が振り込まれる。
注意点
埋葬費を申請する場合、領収書の提出が必須であり、対象となる費用(火葬費用など)が明確に記載されている必要がある。
健康保険組合によっては、追加の給付(付加給付)がある場合も。
2.4 労災保険による葬祭料
概要
労災事故(業務中または通勤中の事故)により亡くなった場合、労災保険から葬祭料が支給されます。
支給条件
故人の死亡が労災認定された事故によるもの。
葬儀を行った者が申請。
申請期限は、死亡日から2年以内。
支給金額
315,000円+給付基礎日額の30日分(給付基礎日額は故人の賃金に基づく)。
最低保証額として、給付基礎日額が低い場合は調整される。
申請方法
1. 申請先:所轄の労働基準監督署。
2. 必要書類
労災保険給付申請書
死亡診断書
葬儀の領収書
故人の賃金明細(給付基礎日額算定用)
3. 手続きの流れ
労災認定手続きを進める(必要に応じて事業主が協力)。
申請書類を提出し、審査後給付金が振り込まれる。
注意点
労災認定が前提となるため、認定手続きに時間がかかる場合がある。
葬祭料は他の給付金(遺族補償給付など)と併給可能。
2.5 生活保護制度による葬祭扶助
概要
生活保護受給者または経済的に困窮する者が葬儀を行う場合、自治体が葬儀費用を支給する制度です。直葬(火葬のみ)など簡素な葬儀が対象となることが多いです。
支給条件
故人または喪主が生活保護受給者である。
葬儀費用を支払う資力がない。
事前に自治体の承認を得る(緊急時は事後申請も可能)。
支給金額
自治体により異なるが、20万円前後(例:大人で最大20.6万円、子どもで16.4万円など)。
火葬費用や必要最低限の葬具費用が対象。
申請方法
1. 申請先:故人または喪主が住む市区町村の福祉事務所。
2. 必要書類
生活保護受給証明書
死亡診断書
葬儀の見積書(事前申請の場合)
葬儀の領収書(事後申請の場合)
3. 手続きの流れ
福祉事務所に相談し、葬祭扶助の適用を確認。
承認後、指定の葬儀社で葬儀を行う(自治体が直接支払う場合も)。
事後申請の場合は領収書を提出。
注意点
豪華な葬儀は対象外で、必要最低限の葬儀に限定される。
事前申請が原則だが、緊急時は福祉事務所に速やかに相談を。
支給は現金ではなく、葬儀社への直接支払いとなる場合が多い。
3. 申請時の注意点とよくある質問
3.1 申請時の注意点
期限を守る:ほとんどの制度で、葬儀から2年以内の申請が必須。期限を過ぎると時効となり給付を受けられない。
書類の準備:領収書や保険証など、必要書類は事前に確認。原本が必要な場合もあるため、コピーを取っておく。
自治体ごとの違い:支給金額や必要書類は自治体や保険組合により異なる。必ず事前に問い合わせを。
実費との関係:給付金は定額であることが多く、実際の葬儀費用を全額カバーするものではない。
二重申請の禁止:同一の葬儀で複数の給付金(例:国民健康保険と社会保険)を同時に申請することはできない。
3.2 よくある質問
Q1:葬儀を行わなかった場合でも給付金はもらえる?
国民健康保険や社会保険では、火葬のみでも給付対象となる場合がある。ただし、葬祭扶助では火葬費用が対象となるが、事前承認が必要。
Q2:喪主以外が申請できる?
葬儀を実際に行った者(費用を負担した者)が申請可能。喪主でなくても、領収書などで負担を証明できれば可。
Q3:給付金はいつ振り込まれる?
申請から1~2ヶ月程度で振り込まれるが、自治体や保険組合により異なる。遅延する場合は進捗を確認。
Q4:香典で費用を賄った場合、給付金は減額される?
香典は給付金の審査に影響しない。給付金は定額または実費に基づくため、香典の有無は関係ない。
4. 実際の利用シーン:ケーススタディ
ケース1:自営業者の父が亡くなった場合(国民健康保険)
状況:60歳の父が亡くなり、息子が喪主として葬儀を行う。父は自営業で国民健康保険に加入。
行動
1. 死亡届を市区町村の戸籍課に提出。
2. 葬儀費用50万円を支払い、領収書を保管。
3. 市区町村の国民健康保険課に葬祭費を申請(必要書類:保険証、領収書、印鑑、口座情報)。
結果:5万円の葬祭費が1ヶ月後に振り込まれる。
ポイント:葬儀費用の全額は補填されないため、事前に予算を計画。
ケース2:会社員の妻が亡くなった場合(社会保険)
状況:40歳の妻が病気で亡くなり、夫が葬儀を行う。妻は会社員で協会けんぽに加入。
行動
1. 協会けんぽに連絡し、埋葬料の申請書類を確認。
2. 葬儀費用80万円を支払い、領収書を提出。
3. 必要書類(保険証、死亡診断書、領収書)を協会けんぽに提出。
結果:埋葬料5万円が2ヶ月後に振り込まれる。
ポイント:実費が5万円を超える場合、埋葬費として実費申請も検討。
ケース3:生活保護受給者の親族が亡くなった場合
状況:生活保護受給者の叔父が亡くなり、甥が葬儀を希望。資力がないため葬祭扶助を申請。
行動
1. 福祉事務所に相談し、葬祭扶助の適用を確認。
2. 福祉事務所指定の葬儀社で直葬(火葬のみ)を手配。
3. 必要書類(受給証明書、死亡診断書)を提出。
結果:葬儀費用約15万円が自治体から葬儀社に直接支払われる。
ポイント:事前相談が重要。豪華な葬儀は対象外。
5. 葬儀費用を抑えるためのTips
葬祭給付金は葬儀費用の全額をカバーしないため、費用を抑える工夫も重要です。以下は実践的な方法です。
直葬や家族葬を選択:火葬のみの直葬(10~20万円)や少人数の家族葬(30~50万円)は費用を抑えやすい。
見積もりを比較:複数の葬儀社から見積もりを取り、内容を比較。不要なオプションを省く。
公営斎場を利用:自治体が運営する斎場は民間施設より安価な場合が多い。
事前相談:葬儀社に事前に相談し、予算に応じたプランを提案してもらう。
香典を活用:香典を葬儀費用の一部に充てる(ただし、香典額は予測困難)。
6. まとめ
葬祭給付金制度は、国民健康保険、社会保険、後期高齢者医療制度、労災保険、生活保護制度など、さまざまな枠組みで提供される支援制度です。支給金額は3万円~20万円程度と制度により異なり、申請期限は通常2年以内です。申請には保険証や領収書などの書類が必要で、自治体や保険組合により手続きが異なるため、事前の確認が不可欠です。
この制度を活用することで、葬儀の経済的負担を軽減し、故人を尊厳ある形で送ることができます。しかし、給付金は定額であることが多く、全額をカバーしないため、葬儀の形式や予算を事前に計画することが重要です。また、制度の詳細は自治体や保険組合により異なるため、最新の情報を確認し、必要に応じて専門家や葬儀社に相談することをおすすめします。
本解説が、葬祭給付金制度の理解と適切な活用の一助となれば幸いです。
参考文献
大阪市公式ウェブサイト
横浜市公式ウェブサイト
千葉県後期高齢者医療広域連合
はじめてのお葬式ガイド
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ツナグお葬式では、適正価格の葬儀をモットーにより質の高いサービスを目差して日々取り組んでおります。
火葬式(直葬)・1日葬、家族葬の事から一般的なご葬儀、自宅葬に至るまで、可能な限りご親族様のご希望に添えるように努力していく所存でございます。ご相談がございましたらお気軽にご連絡下さいませ。

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